経営全般 資産運用

【FP2級】財務と会計③/ライフプランニングと資金計画

引き続き「ライフプランニングと資金計画」です。以下のような項目がありました。
ファイナンシャル・プランニング(FP2級)を学び始めました!

第1回の「キャッシュフロー・マネジメント
第2回の「教育資金計画
第3回の「住宅取得資金計画」
第4回の「カードと消費生活
前回「財務と会計②」から引き続きです。

前回は管理会計の手法について簡単に説明しました。
本来のFP試験の範囲ではありませんが、自分の知識の整理としてまとめておきます。

FP2級 財務と会計の概要

  • 財務会計と管理会計
  • 財務諸表
  • 管理会計
  • 企業価値分析←今回はここ

企業価値分析の概要

企業価値分析を行う理由について「財務と会計①」での解説文を再掲載します。
「投資やM&Aおよび相続といったときには、企業価値分析を行います。企業の価値は財諸表のみから図れるものではありません。基本的に財務諸表に記載されている金額は取得原価であり、現時点での価値(時価)ではないからです。また、将来の獲得する利益にも企業価値がありますが、簿価には含まれていません」

企業価値の算定方法には大まかな考え方として、以下の3つがあります。

①インカム・アプローチ  配当や利益を基準に企業価値を算定する方法
②マーケット・アプローチ 市場の株価等を基準に比較を行い企業価値を算定する方法
③コスト・アプローチ   取得原価を基準に企業価値を算定する方法

また、企業価値と一言で言っても、貸借対照表の資産の部に対応するものと、資本の部に対応するものなどがあります。

企業価値の定義
「企業価値」 ・・・ BSの資産の部に対応する企業価値
「事業価値」 ・・・ 事業の用途に利用する資産の価値
「株主価値」 ・・・ 「企業価値」から負債を控除したもの

(各価値の関係)
企業価値 = 事業価値 + 非事業用資産(有価証券、余剰な現金、利用していない固定資産など)
株主価値 = 企業価値 - 負債

以下、それぞれの企業価値算定方法を説明します。

インカム・アプローチ

配当割引モデル、DCF法、超過利益モデルなどがあります。ここではその考え方についての説明をします。

配当割引モデル

企業が毎期配当を行うとします。すると、この配当が資本金に対するコストとなり、株主資本コストと呼びます。

企業価値を「株主資本」とする場合は、この計算式を逆にすると「企業価値=株主資本」を算定できます。

計算式には、ゼロ成長モデルと定率成長モデルがあります。

この考え方は、毎年一定の配当をすることを前提としています。

(ゼロ成長モデル) 株主資本価値 = 配当/株主資本コスト
(定率成長モデル) 株主資本価値 = (配当×成長率)/(株主資本コスト-成長率)

この方法は配当を企業価値に返還するので、M&Aなどでの評価ではなく、株式投資の評価のように思います。

DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)

毎年得られるフリー・キャッシュフロー(FCF)を現在価値に割引いて合計する方法である。

NPV法(ネット・プレゼント・バリュー法)

獲得するフリー・キャッシュフロー(FCF)を、株主資本コストと有利子負債コストを掛け合わせた割引率(WACC)で割引いて事業価値を算出する。

獲得するキャッシュフロー(FCF) = 営業利益-税金-運転資金増加CF-投資CF ← 支払利息を入れていないのがポイント
株主資本コストと有利子負債コスト(WACC)
  ={有利子負債コスト×(1-法人税)}/(有利子負債+株主資本時価)+株主資本コスト/(有利子負債+株主資本時価)

事業価値 = FCF/WACC
企業価値 = 事業価値 + 非事業用資産(有価証券、余剰な現金、利用していない固定資産など)
株主資本価値 = 企業価値 - 有利子負債

基本的な考え方は上記の通りであるが、5年ほどは実際にFCFを年毎に計算して年毎に割引き、その後の年は上記式によって一気に割引計算をするなど様々な方法がとられる。

APV法(アジャスト・プレゼント・バリュー法)

NPV法は以下の点で利用しづらい点がある。
①負債と資本の割合が一定であることが前提であり、例えば合併したり、借入を増やしたりして負債と資本の割合が大きく変動した時に適用できない。
②WACCの算出には株主資本価値の時価が必要であるが、もともとそれを求めたいので矛盾している。株主資本価値を求めたいのに途中の計算式で株主資本価値が必要となってくるのである。

APV法では、負債と資本の割合が大きく変わろうとその影響を受けない計算方法であり、事業価値を全て自己資金で賄ったときの事業価値と負債による節税価値を分けて計算して合計する方法を採る。

事業価値 = FCF/全て自己資本のコスト + 負債による節税価値
※全て自己資本のコスト ・・・ アンレパードβというのを使いますが、今回この解説は割愛します
※負債による節税価値 = 節税額を負債コストで割引く = 負債×負債コスト×税率/負債コスト = 負債×税率

例)営業利益1,500 負債時価5,000 負債コスト5% 全て資本の資本コスト11.25% 法人税率40%

FCF  = 1,500×(1-40%) = 900
事業価値 = 900/11.25%+5,000×40% = 8,000+2,000 = 10,000
株主資本価値 = 10,000-5,000 = 5,000

(おまけ)
WACC = 900/10,000 = 9%
株主資本コスト WACC9% = 5%×(1-40%)×5,000/10,000 + x%×5,000/10,000  x%=15% 

エコノミック・プロフィット法

エコノミック・プロフィット法では、投下資本に対して資本コストを掛け合わせてコストを算出し、これを利益から差し引いた残りの利益を割り引くことで現在価値にして企業価値を求めます。

EVA法(経済的付加価値)とMVA法(市場付加価値)

EVA・MVAでは「事業価値の利益分」を求めて企業価値を算出します。

EVA = 営業利益×(1‐法人税)-投下資本(期首簿価)×WACC
MVA = EVA/WACC
事業価値 = MVA+投下資本(期首簿価)
 

残余利益法による株主価値の算出

残余利益法という言葉自体が超過利益モデルのことを指す場合があるので、理解が難しいのですが、今回は株主資本を算定する残余利益として説明します。

残余利益 = 経常利益×(1‐法人税)-株主資本(期首簿価)×株主資本コスト
株主資本価値 = 残余利益/株主資本コスト+株主資本(期首簿価)

マーケット・アプローチ

株式市場の価格と比較することで企業価値を求めようとするものです。

以下のように様々な手法があります。

比準方式

類似業種比準方式 ・・・ 比準割合=(DPS割合+EPS割合×3+BPS割合)/5 × 斟酌率(小会社50%、中60%、大70%)
類似会社比準方式 ・・・ 比準割合=(EPS割合+BPS割合)/2

DPS ・・・ 一株当たり配当金
EPS ・・・ 一株当たり当期純利益
BPS ・・・ 一株当たり当期純資産

乗数方式(マルチプル)

PER法(株価/当期純利益)
PBR法(株価/純資産簿価)
Qレシオ法(株価/純資産時価)
PSR法(株価/売上)
PCFR法(株価/営業CF)

EV/EVITDA倍率(株価+有利子負債-金融資産)/(営業利益+減価償却費) ・・・ 減価償却、利息、税金が影響されないため、国際間比較ができる。

トービンのq (負債時価+純資産時価)/資産時価
シンプルq(負債簿価+純資産時価)/資産簿価

コスト・アプローチ

基本的に貸借対照表の資産から負債を引いて株主資本を算定します。簿価純資産法、修正簿価純資産法、時価純資産法などがあります。

将来の事業予測が立てづらくインカム・アプローチが適さない場合でも客観性があります。

また、これらの評価に「営業権」いわゆる「のれん」をどれだけ上乗せするかで価額評価する方法があります。

これで、財務と会計を終わります。

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