管理会計で経営改善|第6回:製品別利益が信用できない理由
長野県松本市の中小企業診断士が、“黄金の指標(ユニットバリュー分析)”で、未来の経営をつくる管理会計をお届けしています。
第6回:製品別利益が信用できない理由
多くの企業では、
「製品別利益」をもとに製品の強弱を判断しています。
- A製品は利益が出ている
- B製品は赤字
- C製品は利益率が高い
こうした数字を見て、
「どの製品を伸ばすか」「どの製品をやめるか」を決めているわけです。
しかし、結論から言うと——
✅ 製品別利益は、経営判断の根拠として“ほとんど信用できません”。
その理由を、できるだけシンプルに整理します。
✅ 1. 製品別利益は“配賦の結果”でしかない
製品別利益は、
家賃・人件費・共通経費などを
「どの製品に何割配るか」で決まります。
つまり、
- 売上基準で配れば A製品が不利
- 稼働時間で配れば B製品が不利
- 人数で配れば C製品が不利
基準の選び方ひとつで、利益が変わってしまう のです。
これは、
「利益」というより “配賦の産物” と言ったほうが正確です。
✅ 2. 製品別利益は“恣意的に操作できてしまう”
配賦基準は担当者が決めます。
- 「この費用は売上で」
- 「この費用は人数で」
- 「この費用は稼働時間で」
こうした判断が積み重なると、
数字はどんどん“担当者の都合”に寄っていきます。
つまり、
製品別利益は“客観的な数字”ではなく、
担当者の価値観が混ざった数字 なのです。
✅ 3. 製品別利益は“規模の違い”を正しく扱えない
製品別利益は、規模が大きい製品ほど有利になります。
- 売上が大きい
- 生産量が多い
- 稼働時間が長い
こうした製品は、
配賦された経費を吸収しやすいため、
利益が出ているように見える のです。
しかし、これは
“規模が大きいから利益が出ているだけ”
というケースが非常に多い。
本当の強さとは関係ありません。
✅ 4. 製品別利益は“改善の優先順位”を誤らせる
製品別利益を見ると、
次のような誤解が生まれます。
- 利益が出ている製品 → 強い
- 赤字の製品 → 弱い
- 利益率が高い製品 → 優先すべき
しかし、実際には:
- 利益が出ている製品が“改善すべきボトルネック”だったり
- 赤字の製品が“価値密度の高い優良製品”だったり
- 利益率が高い製品が“市場で弱い製品”だったり
することが普通にあります。
つまり、
製品別利益は改善の方向性を誤らせる危険な指標 です。
✅ 5. 製品別利益は“価格設定”を誤らせる
製品別利益をもとに価格を決めると、
次のようなことが起きます。
- 本来は強い製品を“高すぎる価格”にしてしまう
- 本来は弱い製品を“安く売ってしまう”
- 利益が出ていると思っていた製品が実は赤字
これは、
配賦された原価が“本当の価値”を表していない からです。
✅ 6. 製品別利益は“経営判断の一貫性”を奪う
製品別利益を前提にすると、
- 製品評価
- 改善
- 投資判断
- 価格設定
これらがバラバラになります。
なぜなら、
配賦の基準がバラバラだから です。
経営判断に一貫性がなくなるのは当然です。
✅ まとめ:製品別利益は“正しそうに見えるだけ”の数字
製品別利益は、
- 配賦の結果でしかない
- 恣意的に操作できる
- 規模の違いを扱えない
- 改善の優先順位を誤らせる
- 価格設定を誤らせる
- 経営判断をバラバラにする
つまり、
経営判断の根拠としては信用できない数字 です。
だからこそ、
貢献利益 × 回収 × スケール統一
という新しい視点が必要になるのです。
✅ 次回予告
第7回:部門別利益が“なんとなく”になってしまう構造
製品別利益と同じように、
部門別利益も“正しそうに見えるだけ”の数字です。
その理由を次回、詳しく解説します。
