管理会計で経営改善|第7回:部門別利益が“なんとなく”になってしまう構造
長野県松本市の中小企業診断士が、“黄金の指標(ユニットバリュー分析)”で、未来の経営をつくる管理会計をお届けしています。
第7回:部門別利益が“なんとなく”になってしまう構造
企業の管理資料には、よく「部門別利益」が載っています。
- 営業部の利益
- 製造部の利益
- 管理部門のコスト
- 支店別の利益
こうした数字を見て、
「どの部門が強いのか」「どこを改善すべきか」を判断しているわけです。
しかし、結論から言うと——
✅ 部門別利益は“なんとなく”の数字であり、経営判断の根拠としては弱い。
その理由を、構造的に整理します。
✅ 1. 部門別利益は“配賦の塊”でしかない
部門別利益は、
家賃・人件費・共通経費などを
「どの部門に何割配るか」で決まります。
つまり、
- 売上で配れば営業部が不利
- 人数で配れば製造部が不利
- 稼働時間で配れば設備部門が不利
基準の選び方ひとつで、部門の利益が変わってしまう のです。
これは、
「利益」というより “配賦の結果” です。
✅ 2. 部門の役割が違うのに、同じ土俵で比較してしまう
部門には本来、役割の違いがあります。
- 営業部:売上をつくる
- 製造部:価値をつくる
- 管理部門:全体を支える
しかし、部門別利益は
これらを同じ土俵で比較してしまう ため、
本来の役割が見えなくなります。
営業部が利益を出しているように見えても、
それは「配賦の基準が営業部に有利だっただけ」ということも普通にあります。
✅ 3. 部門別利益は“規模の違い”を正しく扱えない
部門別利益は、規模が大きい部門ほど有利になります。
- 人数が多い
- 売上が大きい
- 生産量が多い
こうした部門は、
配賦された経費を吸収しやすいため、
利益が出ているように見える のです。
しかし、これは
“規模が大きいから利益が出ているだけ”
というケースが非常に多い。
本当の強さとは関係ありません。
✅ 4. 部門別利益は“改善の優先順位”を誤らせる
部門別利益を見ると、
次のような誤解が生まれます。
- 利益が出ている部門 → 強い
- 赤字の部門 → 弱い
- 利益率が高い部門 → 優先すべき
しかし、実際には:
- 利益が出ている部門が“ボトルネック”だったり
- 赤字の部門が“価値密度の高い部門”だったり
- 利益率が高い部門が“市場で弱い部門”だったり
することが普通にあります。
つまり、
部門別利益は改善の方向性を誤らせる危険な指標 です。
✅ 5. 部門別利益は“経営判断の一貫性”を奪う
部門別利益を前提にすると、
- 部門評価
- 人事評価
- 投資判断
- 改善の優先順位
これらがバラバラになります。
なぜなら、
配賦の基準がバラバラだから です。
経営判断に一貫性がなくなるのは当然です。
✅ 6. 部門別利益は“責任の押し付け合い”を生む
部門別利益は、
本来の目的である「改善」ではなく、
責任の押し付け合い を生むことがあります。
- 「この経費はうちの部門じゃない」
- 「この配賦は不公平だ」
- 「あの部門のせいで利益が下がった」
こうした議論が増えるほど、
本質的な改善から遠ざかります。
✅ まとめ:部門別利益は“正しそうに見えるだけ”の数字
部門別利益は、
- 配賦の塊でしかない
- 役割の違いを無視している
- 規模の違いを扱えない
- 改善の優先順位を誤らせる
- 経営判断をバラバラにする
- 責任の押し付け合いを生む
つまり、
経営判断の根拠としては信用できない数字 です。
だからこそ、
生産高 × 回収 × 専用指標
という新しい視点が必要になるのです。
✅ 次回予告
第8回:原価計算が合わないのはなぜか(構造的な限界)
原価計算は「正確そうに見える」数字ですが、
実は構造的に“合わない仕組み”になっています。
その理由を次回、深掘りします。
