第2回:なぜ配賦は経営判断を歪めるのか
第2回:なぜ配賦は経営判断を歪めるのか
多くの企業で当たり前のように行われている「配賦」。
家賃、人件費、共通経費、間接費などを、売上や人数、作業時間などの基準で“それっぽく”配る作業です。
しかし、この配賦こそが、
経営判断を最も歪める原因 になっています。
今日はその理由を、できるだけシンプルに整理してみます。
① 配賦は“基準の選び方”で結果が変わる
配賦は、どの基準を使うかで結果が大きく変わります。
- 売上で配賦すれば、売上の大きい製品が不利に
- 人数で配賦すれば、人の多い部門が不利に
- 稼働時間で配賦すれば、設備を使う製品が不利に
つまり、
配賦は「正しそうに見える数字」を作るだけで、
本質的な強弱を表していない のです。
② 配賦は“恣意的”になりやすい
配賦は、担当者の判断でいくらでも変えられます。
- 「この部門は売上基準で」
- 「この費用は人数基準で」
- 「この費用は作業時間で」
こうした“基準の使い分け”が積み重なると、数字はどんどん複雑になり、
経営者が本当に知りたい事実から遠ざかっていきます。
③ 配賦は“比較”を歪める
配賦の最大の問題は、
製品や部門の比較を歪めること です。
本来は、
- A製品は強いのか
- B製品は弱いのか
- どの部門が価値を生んでいるのか
こうした“事実”を知りたいはずです。
しかし配賦をすると、
製品や部門に「共通費の重り」が乗ってしまい、
本来の強弱が見えなくなる のです。
④ 配賦は“改善の優先順位”を曖昧にする
配賦された数字を見ると、どこに手を入れるべきかが分かりにくくなります。
- 本当に弱い製品が強く見える
- 本当に強い製品が弱く見える
- 改善すべき部門が分からない
- 投資すべき場所が判断できない
つまり、
配賦は改善の方向性を誤らせる のです。
⑤ 配賦は“価格設定”を誤らせる
配賦された原価をもとに価格を決めると、次のようなことが起きます。
- 本来は強い製品を“高すぎる価格”にしてしまう
- 本来は弱い製品を“安く売ってしまう”
- 利益が出ていると思っていた製品が実は赤字
配賦は、
価格設定の根拠を曖昧にする最大の要因 です。
⑥ 配賦は“経営判断の一貫性”を奪う
配賦を前提にすると、
- 製品評価
- 部門評価
- 改善
- 投資判断
- 価格設定
これらがバラバラになります。
なぜなら、
配賦は“基準がバラバラ”だから です。
経営判断に一貫性がなくなるのは当然です。
まとめ:配賦は“正しそうに見える数字”を作るだけ
配賦は、数字を整えるための作業であって、経営判断のための作業ではありません。
- 基準で結果が変わる
- 恣意的になりやすい
- 比較を歪める
- 改善の優先順位を曖昧にする
- 価格設定を誤らせる
- 経営判断の一貫性を奪う
だからこそ、
配賦に頼らない管理会計が必要になる のです。
**次回予告:
「生産高という“価値の源泉”の考え方」**
次の記事では、
配賦に頼らずに“規模の違い”を扱うための
重要な考え方である「生産高」について解説します。
