第3回:生産高という“価値の源泉”の考え方
第3回:生産高という“価値の源泉”の考え方
管理会計では、製品や部門を比較するときに
「どの基準で比較するか」が常に問題になります。
- 売上で比較する
- 粗利で比較する
- 利益で比較する
どれも一見正しそうですが、
実は 比較したい対象によって基準が変わってしまう という弱点があります。
しかし、生産高は違います。
生産高は、どんな比較でも使える“普遍的な基準”です。
今日はその理由を解説します。
① 売上・粗利・利益は“結果”であり、比較基準として不安定
まず、よく使われる3つの基準を整理します。
✅ 売上
市場価格や顧客構造に左右される
→ 比較基準としては“外部要因”が強い
✅ 粗利
材料費の違いに左右される
→ 原価構造が違う製品同士は比較しにくい
✅ 利益
配賦や経費の扱いで結果が変わる
→ 恣意性が入りやすい
つまり、
比較したい対象によって基準を変えないといけない
という問題があるわけです。
② 生産高は“価値を生み出した量”そのもの
生産高とは、
企業が生み出した価値の総量 を表す指標です。
- 売上の影響を受けない
- 原価構造の影響を受けない
- 配賦の影響を受けない
- 利益の恣意性を受けない
つまり、
外部要因にも内部要因にも左右されない“純粋な価値の量” です。
だからこそ、
どんな比較にも使える“普遍的な基準”になるのです。
③ 生産高は比較対象を選ばない
ここが最大のポイントです。
✅ 製品比較
→ 売上や粗利の違いに左右されず、純粋な価値量で比較できる
✅ 部門比較
→ 人数や設備の違いに左右されず、価値の貢献度で比較できる
✅ 改善の優先順位
→ どの改善が最も価値を生むかが分かる
✅ 投資判断
→ どの部門に投資すべきかが明確になる
つまり、生産高は
「どんな比較でも使える唯一の基準」
と言っても過言ではありません。
④ 生産高を使うと“規模の違い”が正しく扱える
製品や部門を比較するとき、
最も大きな問題は 規模の違い です。
- 大きい部門は強く見える
- 小さい部門は弱く見える
しかし、生産高を使うと、
規模を揃えたうえで比較できる ようになります。
これは、配賦では絶対に実現できない世界です。
⑤ 生産高は“経営判断の共通言語”になる
生産高を基準にすると、
経営判断が一貫します。
- 製品評価
- 部門評価
- 改善の優先順位
- 価格設定
- 投資判断
これらが 一つの基準で統一される ため、
経営が驚くほどシンプルになります。
まとめ:生産高は“価値の源泉”であり、比較の土台になる
生産高は、
売上・粗利・利益のような“結果”ではなく、
価値を生み出した“源泉”そのもの です。
だからこそ、
- 比較対象を選ばない
- 規模の違いを正しく扱える
- 経営判断が一貫する
- 改善の優先順位が明確になる
という強力なメリットがあります。
**次回予告:
「経費は配るものではなく“回収すべき投資”という考え方」**
次の記事では、
配賦しない管理会計のもう一つの柱である
“経費は回収するもの”という視点 を解説します。
