第4回:経費は配るものではなく“回収すべき投資
第4回:経費は配るものではなく“回収すべき投資”
管理会計では、家賃・人件費・共通経費などを
「どの製品に何割配るか」という議論がよく行われます。
しかし、この“配賦”という考え方が、
経営判断を大きく歪めていることは前回までの記事でお伝えしました。
では、経費はどう扱うべきなのか。
結論はシンプルです。
✅ 経費は配るものではなく、“回収すべき投資”である
経費は「どの製品に何割配るか」ではなく、
企業全体として“どれだけ回収できたか”で見るべきです。
この視点に切り替えるだけで、
経営判断が驚くほどシンプルになります。
✅ 1. 経費は“結果を配る”のではなく、“価値で回収する”
配賦は「結果を配る」作業です。
- 売上が大きい製品に多く配る
- 人数が多い部門に多く配る
- 稼働時間が長い製品に多く配る
しかし、これは本質ではありません。
経費は、
価値を生み出すために先に投じた“投資” です。
だから本来は、
- どれだけ価値を生んだか
- どれだけ回収できたか
という視点で見るべきなのです。
✅ 2. 経費を“回収”として見ると、改善の優先順位が自然に決まる
配賦を前提にすると、
改善の優先順位が曖昧になります。
しかし、経費を“回収”として見ると、
次のように自然に優先順位が決まります。
- ✅ 回収力の高い製品 → 強み
- ✅ 回収力の低い製品 → 改善対象
- ✅ 回収できていない部門 → 改善または撤退検討
配賦のように「基準の選び方」で結果が変わることはありません。
✅ 3. 経費を“投資”と見ると、価格設定が明確になる
配賦された原価をもとに価格を決めると、
どうしても“なんとなく”の価格設定になります。
しかし、経費を投資と見ると、
- この製品はどれだけ価値を生んでいるか
- どれだけ回収できているか
- 価格はその価値に見合っているか
という判断ができるようになります。
つまり、
価格設定の根拠が明確になる のです。
✅ 4. 経費を“回収”として扱うと、経営判断が一貫する
経費を配賦している限り、
製品評価・部門評価・改善・投資判断がバラバラになります。
しかし、経費を“回収すべき投資”と見ると、
- 製品評価
- 部門評価
- 改善の優先順位
- 投資判断
- 価格設定
これらが 一つの基準で統一される ようになります。
経営がシンプルになり、迷いがなくなります。
✅ まとめ:経費は“配る”のではなく、“回収する”
経費は、
- 配るものではなく
- 割り振るものでもなく
- 恣意的に分けるものでもなく
価値によって回収すべき“投資” です。
この視点に切り替えるだけで、
- 経営判断が一貫する
- 改善の優先順位が明確になる
- 価格設定の根拠が強くなる
- 製品・部門の強弱が見える
という大きなメリットが生まれます。
✅ 次回予告
第5回:製品・部門の強弱を正しく見るための新しい視点
ここでは、
生産高 × 回収 × 専用指標
を使って、強弱をどう見抜くかを解説します。
