管理会計で経営改善|第8回:原価計算が合わないのはなぜか(構造的な限界)
長野県松本市の中小企業診断士が、“黄金の指標(ユニットバリュー分析)”で、未来の経営をつくる管理会計をお届けしています。
第8回:原価計算が合わないのはなぜか(構造的な限界)
原価計算は、企業の管理資料の中でも
「最も正確そうに見える数字」です。
- 材料費
- 人件費
- 製造間接費
- 配賦基準
- 製品別原価
- 標準原価と実際原価の差異
こうした数字が整然と並んでいると、
「原価は正確に計算できている」と思いがちです。
しかし、現場でよく聞く声はこうです。
- 「原価が合わない」
- 「実態とズレている」
- 「改善に使えない」
- 「原価計算のための作業が多すぎる」
なぜ、原価計算は“正確そうに見えるのに、実態と合わない”のでしょうか。
結論はシンプルです。
✅ 原価計算は、構造的に“合わない仕組み”になっているからです。
✅ 1. 原価計算は“配賦”に依存している
原価計算の中で最も大きな問題は、
製造間接費を配賦しないと原価が完成しない という構造です。
- 家賃
- 設備費
- 間接人件費
- 光熱費
- 工場管理費
これらは製品に直接紐づかないため、
「何らかの基準」で配るしかありません。
しかし、配賦は基準の選び方で結果が変わります。
- 稼働時間で配れば設備を使う製品が不利
- 人数で配れば人手の多い製品が不利
- 売上で配れば高価格帯の製品が不利
つまり、
原価計算は“配賦の選び方”で数字が変わる仕組み なのです。
これでは、実態とズレるのは当然です。
✅ 2. 原価計算は“時間の使い方”を正確に測れない
原価計算では、
「どの製品にどれだけ時間を使ったか」を前提にします。
しかし、現場では:
- 同時進行の作業がある
- 段取り時間が製品ごとに違う
- 設備の待ち時間が発生する
- 作業者が複数の工程を兼務する
- 製品ごとに手間のバラつきがある
こうした“現場のリアル”は、
原価計算のモデルでは表現できません。
つまり、
原価計算は現場の複雑さを単純化しすぎている のです。
✅ 3. 原価計算は“変動費と固定費”を分けて考えられない
原価計算では、
固定費も変動費もまとめて製品に配賦します。
しかし、実態は違います。
- 材料費 → 製品ごとに変動
- 人件費 → 半固定
- 設備費 → 完全固定
- 工場管理費 → 固定に近い
これらを一つの基準で配ると、
製品ごとの“本当の負荷”が見えなくなる のです。
✅ 4. 原価計算は“改善の方向性”を示さない
原価計算は、
「過去の結果を整理する仕組み」です。
しかし、経営が本当に知りたいのは:
- どの製品を伸ばすべきか
- どの工程を改善すべきか
- どこに投資すべきか
- どの部門が価値を生んでいるか
こうした“未来の判断”です。
原価計算は、
改善の優先順位を示す仕組みではない ため、
経営判断に使いにくいのです。
✅ 5. 原価計算は“正確に見えるだけ”の数字
原価計算は、
- 数式がある
- 表が整っている
- 差異分析ができる
こうした理由で“正確そうに見える”だけです。
しかし実態は:
- 配賦の選び方で数字が変わる
- 現場の複雑さを表現できない
- 固定費と変動費を混ぜてしまう
- 改善の方向性を示さない
つまり、
原価計算は構造的に“合わない仕組み” なのです。
✅ まとめ:原価計算は“正確そうに見える不正確な数字”
原価計算は、
- 配賦に依存している
- 現場の複雑さを表現できない
- 固定費と変動費を混ぜてしまう
- 改善の方向性を示さない
という理由で、
経営判断の根拠としては弱い 仕組みです。
だからこそ、
貢献利益 × 回収 × スケール統一
という新しい視点が必要になるのです。
✅ 次回予告
第9回:改善の優先順位が決まらない本当の理由
原価計算や製品別利益を使っている限り、
改善の優先順位は“なんとなく”で決まってしまいます。
その構造を次回、深掘りします。
