管理会計で経営改善|第9回:改善の優先順位が決まらない本当の理由
長野県松本市の中小企業診断士が、“黄金の指標(ユニットバリュー分析)”で、未来の経営をつくる管理会計をお届けしています。
第9回:改善の優先順位が決まらない本当の理由
現場改善の会議で、よくこんな声が聞こえます。
- 「どこから手をつけるべきか分からない」
- 「改善案は出るけど、優先順位が決まらない」
- 「結局“やりやすいところ”から手をつけてしまう」
- 「改善しても全体が良くならない」
なぜ、改善の優先順位はこんなにも決まらないのでしょうか。
結論はシンプルです。
✅ 従来の管理会計では“比較の土台”が揃わないからです。
改善の優先順位は、
どの製品・どの部門がどれだけ価値を生んでいるか
が分からなければ決められません。
しかし、従来の管理会計では、この“価値の量”が正しく見えない仕組みになっています。
✅ 1. 売上・粗利・利益は“比較基準として不安定”
改善の優先順位を決めるとき、多くの企業は次の数字を使います。
- 売上
- 粗利
- 利益
- 利益率
しかし、これらはすべて “結果” であり、比較基準としては不安定です。
- 売上 → 市場価格に左右される
- 粗利 → 材料費の違いに左右される
- 利益 → 配賦の影響を受ける
つまり、比較したい対象によって基準を変えないといけない のです。
これでは、改善の優先順位が決まるはずがありません。
✅ 2. 製品別利益・部門別利益は“配賦の産物”
前回までの記事で解説したように、製品別利益も部門別利益も、
配賦の基準ひとつで結果が変わる数字 です。
- 売上基準で配れば A製品が不利
- 稼働時間で配れば B製品が不利
- 人数で配れば C部門が不利
つまり、改善の優先順位が“配賦の基準”で変わってしまう のです。
これでは、現場が迷うのは当然です。
✅ 3. 原価計算は“現場の複雑さ”を表現できない
原価計算は正確そうに見えますが、実際には現場の複雑さを表現できません。
- 同時進行の作業
- 段取り時間の違い
- 設備の待ち時間
- 作業者の兼務
- 工程ごとの負荷の違い
こうした“現場のリアル”を単純化してしまうため、改善のボトルネックが見えない のです。
✅ 4. 改善の優先順位は“強弱”が見えないと決まらない
改善の優先順位を決めるには、本来は次のことが分かっていなければいけません。
- どの製品が強いのか
- どの製品が弱いのか
- どの部門が価値を生んでいるのか
- どの工程がボトルネックなのか
しかし、従来の管理会計では強弱が正しく見えない ため、改善の優先順位が“なんとなく”で決まってしまいます。
✅ 5. “やりやすい改善”が優先されてしまう
比較の土台が揃わないと、改善の優先順位は次のように決まります。
- 声の大きい人の意見
- 取り組みやすいテーマ
- 目立つ問題
- 予算が取りやすい案件
- 上司が気にしているポイント
つまり、
本当に価値を生む改善ではなく、
“やりやすい改善”が優先されてしまう のです。
これが、改善が進まない最大の理由です。
✅ 6. 改善の優先順位は“貢献利益 × 回収 × スケール統一”で初めて決まる
改善の優先順位を正しく決めるには、次の3つが揃っている必要があります。
✅ 1. 貢献利益(価値の源泉)
→ 比較の土台
✅ 2. 回収(経費は配るのではなく回収する)
→ 経費の扱い方
✅ 3. スケール統一(売上係数・人数係数・稼働係数)
→ 特徴の可視化
この3つが揃うことで、どの改善が最も価値を生むかが自然に見える ようになります。
改善の優先順位が“自動的に決まる”世界です。
✅ まとめ:改善の優先順位が決まらないのは“比較の土台がない”から
改善の優先順位が決まらないのは、
- 売上・粗利・利益が不安定な基準だから
- 製品別利益・部門別利益が配賦の産物だから
- 原価計算が現場の複雑さを表現できないから
- 強弱が見えないから
- “やりやすい改善”が優先されてしまうから
つまり、
比較の土台がない状態で改善を議論している のです。
だからこそ、
貢献利益 × 回収 × スケール統一
という新しい視点が必要になります。
✅ 次回予告
第10回:価格設定が“感覚”に寄ってしまう背景
価格設定は経営の生命線ですが、多くの企業で“なんとなく”で決まっています。
その理由を次回、深掘りします。
